シナリオ:霧桐島殺人事件
陸の孤島-前編の続き。
探索
探索1
まずは:ホテル内の食事を摂る場所へ
🎲1d10 → 8
冷静な探索!資料8を得る
■ランダム資料08
[スペード]の資料。老人の字で書かれた手紙。
「やはりこの島を観光地などにするべきではなかったのだ。あの宿の主人がはじめたことだ。責任を取って貰わねば……」
ホテル内の案内図を見ながら、――動いていないエレベータを見切りつつ、ロビーへ。
ホテル内はどこを見ても静まり返っていて、おかしい。まるでドッキリでも仕掛けられているんじゃ、と思う。県外の客一人を標的にするには、大仰すぎるドッキリだけど。
自販機も動いていなくて、飲み物を買おうという目論見は外れた。
仕方なく売店の缶を一つもらって、そばに代金を置いておく。この極寒の中でもまだ「あたたか~い」の熱が残っていて、なけなしの缶は私の手先と体をじっくり温めてくれた。
飲みながらうろついていたら、変な紙切れを見つけた。観光客向けのポスターでも、宿泊者向けの事務案内でもない。手書きのそれは、誰かから誰かに宛てた手紙だ。
角ばった読みやすい字だけど、内容は奇妙なものだった。この島を観光地にすべきでなかった、という文章が読み取れた。……こんなに楽しい島なのに、何か問題があるのだろうか? 手紙の記載は、宿の主人に責任があるような書き方をしていた。
……何のことだかはさっぱりだけど、薄々気付けることはある。
この島にいたら、よくないのかもしれない。
探索2
🎲1d10 → 8
宿外の共同温泉
荷物を持って、ホテルを出ることにした。留まれと言われたばかりだけど、留めてくる従業員すら見当たらないのでは仕方ない。
きっと今は非常時なのだ。もっと安全な場所が欲しい。誰かがいる場所に行きたい。
ラックで萎びている観光案内を一枚取り上げ、地図を見ながらホテルを後にする。
🎲1d10 → 7
冷静な探索。
🎲1d10 → 3
資料3を得た!
■ランダム資料03
[ダイヤ]の資料。
客のひとりが残したらしい手記。狂気的な印象を感じ取る。
「霧桐島の伝説は本当だったのだ。私は私の一族の悲願のため、霧桐坊主を蘇らせなくては……」
ホテルの外も、中と変わらない、もしくはそれ以上に冷え切っていた。
夏物の普段着と引きずる毛布だけではだいぶ心許ないが、ないよりはいい。そう言い聞かせて、閑散と凍り付いた道を進む。
目指すのは温泉だ。単純に、まだ温かいものが残っていそうだったから。もしそうでなかったとしても、同じことを考えた誰かがいる可能性はある。地図を頼りに、最も近い温泉街へと向かう。……徒歩で。
残念ながら、温泉も結果は同じだった。客どころか番台もいないし、何なら自動ドアを手動で開ける必要があった。ちょっと疲れたけど、運動して身体が温まったことは確か。
温泉へ向かうにはエレベーターを経由する作りがあるようで、停電の今は向かうことができなかった。非常階段も閉ざされているし、ついてない。
代わりに、発見はあった。
靴箱のロッカーに、一冊の手帳が残されていた。誰かの忘れ物だろうか? 勝手に見るのは忍びないけど、人の痕跡があるならば追いたい。
よくあるスケジュール帳のようなそれだが、中身はどことなく薄気味が悪い記載ばかりだった。今週の日付のページに、走り書きのように複数の文章が残されている。読み取れたのはいくつか――「霧桐島の伝説」「一族の悲願のため、霧桐坊主を蘇らせなくては」。
意味も分からず、ぞっとした。映画か何かみたいな世界観だ。この島は、やっぱりおかしな島だったんだろうか? それで私は運悪く、何かの出来事に巻き込まれてしまったんだろうか?
他に、意味の分かる記載はなかった。一つも。……この手帳を持っていても、いいことはない気がする。靴箱の、目立つ場所に戻しておいて、そこを離れることにした。
スキル判定のこと忘れてた。まあ軒並み出目がよかったからよしとする。
探索3
🎲1d10 → 1
他の宿泊客が泊まっていた場所
🎲1d8 → 7
調査:7:冷静な探索。
🎲1d10 → 5
資料5を取得
■ランダム資料05
[ハート]の資料。地元について熱く語ったパンフレットに記載されたインタビュー。
「この島はもっと熱く盛り上がれるはず! そのためには、霧桐坊主の力を借りるべきです。どんな手段を使ってでも私はやり遂げてみせますよ」お饅頭添え!
手近な民宿へと入った。とにかく、あの手帳から遠ざかっておきたくて。
相変わらず人の姿は全くなかったけど、だんだん状況に慣れてきたのか、気にならなかった。……寒すぎてそれどころではないことでもある。何でもいいから、温まりたい。
例によってぬるい飲み物をもらいながら、霜が少なくて比較的きれいなパンフレットを眺めた。町興しの特集がなされているものだ。
「霧桐坊主」。この島において、よく目にする単語。
坊主と呼ぶからには人なんだと思いたいが、そうでないことは察している。伝説だとか、蘇らせるだとか……きっと、神様や妖怪の類なんじゃないだろうか。海坊主という妖怪も聞いたことがある。それがどういう妖怪かは、流石に覚えていないけど。
お化けや幽霊は別に信じていないけど、こういう異常事態ではそうも言っていられない。何か、いるのかもしれない。
……私って、ちゃんと帰れるのかなぁ。終わりが見えない不安の代わりに、ひたすら甘酒の温かさを味わった。
探索4
🎲1d10 → 8
共同温泉
🎲1d10 → 9
ひらめき建築:9:冷静な探索
🎲1d10 → 6
資料6を取得!
■ランダム資料06
[ハート]の資料。色々なことが書き込まれた帳簿。どうやら借金に苦しんでいたらしい。メモがはさまっている。
「やっぱり殺すしかない。個人的に借りただけだから、なかったことになるはずだ」
宛てもなく無人の町をさまよう。次に入った場所はこじんまりとした温泉だ。やっぱり、温かな湯の幻想は捨てきれなかった。
ここは小さいながら変わった作りをした建物で、比較的新しいように思う。……その代わり、経営が大変であったような書き置きも残されていたけど。
「やっぱり殺すしかない」――普段、殺害予告のような内容を見たら、慌てて通報を考えるだろう。でも、今の私は特異な状況に置かれ、すっかり麻痺している。麻痺しているという自覚があるだけいい、と、自分に言い聞かせることも増えている。ただ思うことは一つだ。夜は、温かな場所で眠れるといいな。
キッチンには、ガスで動かすタイプのコンロがあり(私はこの正式名称を知らない)、少しだけまともな暖を取ることができた。
何か料理もできたら良かったんだけど、試しにヌードルをコンロに掛けてみたら、直火が当たって火事になるところだった。
探索5
🎲1d10 → 3
宿、従業員用エリア
🎲1d6 → 3
現場調査:3:不安+1
視界に見える限り、道は凍り付いている。木々も。海も。そして、船も。
……もしかして私は、完全にこの島に閉じ込められているのではないか? そのことを、どうしようもないと知りながらも真剣に心配すべきなのではないか?
とにかく見知った場所に戻ろうと、氷塊のような街中を進む。
私を迎え入れてくれた港。
海鮮丼がおいしいテラス。
クッキーを買ったお店。
そして、昨晩泊まったホテル。
誰もいないな、とふと思った瞬間、涙が出た。
目元はすぐに凍ってしまい、手で擦ったら痛かった。
探索6
🎲1d10 → 1
宿、他の宿泊客の部屋
🎲1d4 → 1
察知:1:不安と恐怖
何だかんだで、このホテルが一番温かい気がする。風が入らないし、一晩だけ見慣れた内装だから、気分的にも。
とは言え、凍り付いた室内は案内板も見づらい。うつむいて歩いていたら、別の部屋に間違えて入ってしまった。見覚えのない荷物があって、少しだけドロボウになったような気分で慌てて出る。
結局、出かけた中で人と会うことはなかった。私はどうしようもない寂しさを抱えながら、天蓋のベッドへと潜り込んだ。
エンディング
犯人について考える
手帳を残した狂信的な客、あるいは町興しの関係者。少なくとも「霧桐坊主なる存在を呼び起こした者が主犯である」と考える。
03:[ダイヤ]狂信的な客
本当の犯人:
🃏 → 🍀クローバーの 10
従業員のリーダー、または平社員。
霧桐饅頭チャレンジ(4回!)
🃏 → 🍀クローバーの 8
一致だ!
END-A
いつの間にか深く眠ってしまっていた。次に視界に入ってきたのは、全く凍っていない天井だった。
知らない部屋。きちんとしたベッド、テンプレートのように備え付けられたテーブルと椅子、……知らない土地の天気予報を流すテレビ。それから、広い窓と景色。
慌てて飛び起きた。寒くない。凍傷みたいに赤らんでいた手も、元通りになっている。荷物はテーブルのところに散らかっていて、あれだけ買い込んだ土産や食料もすっからかんだった。財布の残高は思ったよりも多くて、スマホの充電は満たされている。
……何も変わりがない。まるで、昨晩のことなんてなかったかのように。
ここはどこかのホテルのようだった。慌てて呼び付けた従業員は随分と怪訝な顔をしたが、真剣な私の様子を見かねてか、いろんなことを教えてくれた。
ここは霧桐島ではないこと。私のスマホの時刻は合っていること。私は昨晩、何事もなくここにチェックインしたこと。急激な寒波が訪れたなんてニュースは、今のところ見ていないこと。
――あれは、夢だったのだろうか? 凍えた町の景色は。どこまでも続く氷海は。引きつった筆跡の日記は。宿の主が殺されたという、緊迫した電話の声は。
その答えを、この従業員は持たなかった。当たり前だ。ここは霧桐島ではないのだから。
私はホテルを引き払い、家へ帰ることにした。予定よりずっと早いけど、今は一刻も早く、慣れ親しんだ家に、家族の元に戻りたかった。