なんらかの問いをしてからタロットを引き、柄に応じていい感じにひたすら書くだけの遊び。
ある村人の話
ある村に、一人の村人がいました:
🔮< 5 教皇> 人徳/尊敬/社会性 // 束縛/不信/虚栄
彼は村唯一の修道者、司祭さまなどと呼ばれる聖職者でした。
しかし、本当は聖職者などではありません。善良な村人に拾われたのをいいことに、権力ある役割を引き継いだだけの、元山賊でした。
彼は日々、村人の相談事を受けたり、あるいはささいな手伝いをしたりして暮らしていました。収入はただでさえ少ない村人たちの喜捨だけ。財布は小さくとも十分でした。なぜなら、村ではそもそも使い道がないのですから。
彼は今のこの生活について:
🔮<聖杯♥️ 1/Ace > 喜び/満足
彼は今のこの生活について、満足していました。浪人じみた生活から離れてもうずいぶんが経ちます。刺激に欠ける生活と言えばそうですが、衣食住に困ることはありません。唯一気がかりなのは、本当の己が信仰から遠い不心得者であるという事実だけ。
丸くなったということかな、と自分でも思います。
ある日、:
🔮<聖杯♥️ 8 > 成功の放棄/謙遜
とある日、教会――立派な作りではない小屋を、村人は便宜上そう呼びます――に、村長がやってきました。白髪のひげをたくわえている、高齢の村長です。明らかにならず者であった男を受け入れたくらいの、人の好い村長です。
彼は言いました。「自分は高齢で、跡継ぎの息子も村を出ていったきりだ。ついては、あんたに村を仕切っていただけないだろうか」
男は驚きました。自分が村の代表になるなんて!
聞いてみたところ、村人の多数が男を推薦したようです。いわく、日頃とてもよくしてもらっている、神父さんこそ村と村人のことをよく考えている――。
男は悩みました。なんせ自分は神の道も何も知らない、偽りの神父に過ぎないのです。
今でこそ村に受け入れられ幸福ですが、今後もそうであるとは限りません。偽物だと知れば、村人は自分を追い出すのではないか? 当然の心配です。
しかも元山賊ともなれば、山間の村にとっては最も嫌うべき相手と言ってもいいでしょう。場所こそ違えど、男もこういう村を略奪したことがあるのですから。
男は断りました。もっと適した人物がいるはずと。
村長は残念そうな顔を見せたあと、「気が代わったらいつでも言いなさい」と言い残し、帰ってゆきました。
その晩:
🔮<棒♣️ 女王 > 田舎の女性/親しみやすく貞淑/尊敬できる
日も落ちた晩のこと。一人の娘が訪ねてきました。村に住む縫子です。彼女は盲で、しかし不思議と針の扱いに長け、外でも転ばずに歩いて見せる、そんな不思議な女性でした。
彼女は何かを祈りにきたようでした。
祈りについて:
🔮<硬貨♦️ 10 > 利益/財産/家族
縫子はいいました。家族に幸せな時間を与えてくださって、ありがとうございました。神様のお陰です。
祈りの動作を終えたあと、微笑んで付け足します。「神父さんが来てから、とても村が安定していて、穏やかで幸せなんです」。
月のきれいな晩でした。窓の油紙越しに月光が降り注ぎます。
男は悩みます。自分の説教は、村に残されていた古い聖書に頼りきり。教義も何も読み込んではいない。しかし、この村は自分の居場所である。なおかつ、自分を受け入れてくれている彼らには、まだ報い切れてもいない。
告白が、必要なのかもしれません。もし村が自分を恨むというのなら、それも甘んじて受け入れましょう。
必要な償いがあるならば、何でも背負う覚悟です。それこそが自分に課せられた信仰なのだろう、男は頷きました。